海外の持続可能な観光「サスティナブルツーリズム」の成功例・取り組み事例

海外のSDGs(持続可能な観光)の取り組み事例  観光・インバウンド

アフターコロナの観光の在り方として注目を浴びているのがサスティナブルツーリズムです。

サスティナブルツーリズムとは、SDGs「持続可能な観光」のことで、国連世界観光機関(UNWTO)は、2030年までに達成されるべき「持続可能な開発目標 (Sustainable Development Goals: SDGs)」 すなわち世界の貧困削減および持続可能な開発の促進に向けて設定された目標を掲げています。

国連世界観光機関(UNWTO)は観光分野における主導的な国際機関として、経済成長、包摂的な発展、持続可能な開発の推進力として観光を促進し「持続可能な観光」を進めており、「持続可能な観光」を「訪問客、業界、環境及び訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに応えつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義しています。

「持続可能な観光」では以下のことが求められています。

  • 主要な生態学的過程を維持し、自然遺産や生物多様性の保全を図りつつ、観光開発において鍵となる環境資源を最適な形で活用する。
  • 訪問客を受け入れるコミュニティーの社会文化面での真正性を尊重し、コミュニティーの建築文化遺産や生きた文化遺産、さらには伝統的な価値観を守り、異文化理解や異文化に対する寛容性に資する。
  • 訪問客を受け入れるコミュニティーが安定した雇用、収入獲得の機会、社会サービスを享受できるようにする等、全てのステークホルダーに公平な形で社会経済的な利益を分配し、貧困緩和に貢献しつつ、実行可能かつ長期的な経済運用を実施する。

ここでは、このようなSDGs(持続可能な観光)に対する取り組みを行っている海外の事例としてハワイ州とスウェーデンをご紹介します。

ハワイ州のSDGs・持続可能な観光の取り組み

ハワイ

ハワイ州は毎年多くの観光客が訪れる世界でも有数の観光地の1つですが、そんなハワイ州には多くの自然が存在し、それらに対する環境問題も大きな課題となっています。

この課題に対しハワイ州では1976年以降「Mālama Hawaii (マラマハワイ)」というスローガンのもと様々な「持続可能な観光」に対する取り組みを展開してきました。

マラマハワイ

ハワイ州観光局は、ハワイ語で「思いやりの心」を表す「マラマ」から「マラマハワイ」というスローガンを作りました。

このような「マラマハワイ」はハワイ版「レスポンシブル・ツーリズム」ともいえます。

ハワイでは観光客に対し5つの行動指針を掲げています。

1つ目は海洋生物に出会ってもむやみに近づかないことです。

勝手にエサをあげたりするだけでなく、各生き物ごとに設けられている推奨距離以内に近づくことも禁止されています。

2つ目は有害成分の入った日焼け止めの使用禁止をしています。

有害成分を含む日焼け止めはサンゴ礁への環境負荷が大きく、2021年以降はハワイ州内でも販売が禁止されるようになりました。

その代わりとして、「Reef safe」と表示された日焼け止めが販売される他、観光客にはラッシュガードやUVカットのTシャツなどによる紫外線対策を推進しています。

3つ目は森林を訪れる時は靴裏の泥を落とすことを推進しています。

ハワイには約2,944種類もの固有種が生息しています。

靴裏の泥を落とすのは、それらを守るために寄生する菌を寄せ付けないためです。

4つ目は進入禁止エリアに侵入しないことです。

ハワイには進入禁止エリアが多いため、観光客は標識に注意し、また事前に調べておく必要があります。

5つ目はエコバッグやマイボトル、マイストローの持参を推進しています。

プラスチックは環境破壊の1つの要因として深刻な問題であるため、買い物をする際などはマイバッグの利用を促しています。

Aloha plus Challenge(アロハプラスチャレンジ)

またこの5つの指針の他にも「Aloha plus Challenge(アロハプラスチャレンジ)」と呼ばれるプログラムもあります。

Aloha plus ChallengeはSDGsを基準に、ハワイ州全体の取り組みとして設定された地域主導の特別プログラムです。

このプログラムではSDGsの17個の目標の中から6つに絞り、経済、社会、環境の側面から持続可能な社会を目指すことをゴールとしています。

1つ目はクリーンエネルギーへ転換です。

ハワイ州では2030年までにエネルギー供給量の70%をクリーンエネルギーへ転換し、そのうちの40%を再生可能エネルギー、30%をエネルギー効率として転換することを目標にしています。

また2045年までには100%代替エネルギーで供給しようと考えています。

2つ目は地元産の食材を供給することです。

現在ハワイの食料自給率は10%と低く、2030年までには消費される食材の20〜30%を地元産でまかなうことを目標にしています。

これにより地元産の食材価格を削減するだけでなく、食料廃棄物の削減も目指しています。

3つ目は淡水の確保や火炎流域の森林の30%を保全するなど自然資源の保全を目指しています。

4つ目は固形廃棄物の削減です。

2030年までに、リサイクルや生物学的変換、生活習慣の改善、ゴミ・排水処理の方法開発などによって70%の廃棄物削減を目指しています。

5つ目は持続可能なコミュニティを構築することです。

経済的な豊かさ・交通手段の幅広い選択肢・温室効果ガスの排出削減など様々な分野で生活しやすい社会を形成することを目標としています。

6つ目はグリーンジョブおよびに環境教育を行うことです。

2030年までに、質の高い教育や雇用・労働力や専門的な能力の開発・持続可能な観光促進など経済の多様性を強化することを目標にしています。

このようにハワイ州では独自の取り組みをいくつも展開し、観光業を通して積極的に持続可能な社会を形成しようとしています。

スウェーデンのSDGs・持続可能な観光の取り組み

スウェーデン

スウェーデンは持続可能性に関する取り組みが世界トップレベルで、2020年度のSDGsの達成度ランキングで世界で第1位でした。

スウェーデンの再生可能エネルギーに対する取り組み

スウェーデンでは国内のエネルギー使用の約50%が水力発電や風力発電の再生可能エネルギーで賄っています。

2045年までにCO2排出量を100%削減するという目標を掲げ、再生可能エネルギーのひとつであるバイオガスを使用しています。

このバイオガスはゴミ処理場など市民から集められた生ゴミと汚泥や酪農業からでる動物糞などを混ぜ合わせて発酵し、堆肥化させ、それによって出てくるメタンガスを精製したもので、ガソリンの代替エネルギーとして活用しています。

捨てられるはずのゴミを再利用し、排泄物だったものをエネルギー源としているため環境への負担はほとんどありません。

それに加え、市民が生ゴミを捨てる際にはビニール袋にいれて捨てるのではなくトウモロコシを原料とした、生分解性のあるバイオ袋に入れて捨てるような仕組みを取っています。

そうすることで袋ごと堆肥化できます。

ホテルではこのような再生可能エネルギーを積極的に使用しています。

また、プラスチックをホテル内から極力排除し、自然素材だけで部屋づくりを行うなどプラスチック削減に対する取り組みも積極的に行なっています。

スウェーデンの持続可能な交通手段に対する取り組み

スウェーデンを旅行すると、公共交通機関の利用が推奨されているのを強く実感すると思います。

ストックホルムでは、2017年に地下鉄・電車・バスで100%再生可能エネルギーを使用するという目標を達成するなど、スウェーデンでは公共の交通機関に積極的に再生可能エネルギーを使用しています。

その他、スウェーデンでは町中のいたるところに電動キックボードが設置されています。

どこでもノリ捨てることができるため、その利便性から多くの市民に利用されています。

この移動手段の1つでもある電動キックボードの充電には再生可能エネルギーが使用されているため、二酸化炭素は排出されません。

電動キックボードの利用により、車の利用が減り、ガソリンの使用も必要なくなり、二酸化炭素排出減少に大きく貢献しています。

もちろん旅行者も電動キックボードを簡単に利用することができます。

スウェーデンのフェアトレードに対する取り組み

また、スウェーデンは「フェアトレード」にも力を入れています。

フェアトレードとは「公平・公正な貿易」という意味で、開発途上国の原料や製品を適正価格で購入することで発展途上国の生産者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組みです。

開発途上国では原料となるものが多く生産されますが、それらの取引の際に正当な価格が支払われないことや、子供が学校へ行かせてもらえずに働かされてしまうなどの問題があります。

他にも栽培時に必要以上の農薬が使用され、健康被害や環境破壊をもたらすものもあります。

これらの問題に対し、国際フェアトレード認証は適正価格と奨励金の支払い、長期的な取引、児童労働の禁止、環境に優しい生産気候変動の防止などに基準を定めました。

この「フェアトレード」とは経済・社会・環境の3つの観点からSDGsの目標も実現できるものです。

消費者はどの製品がフェアトレード製品であるのかは商品に付けられた認証ラベルによって判断できます。

スウェーデンの観光業ではこのフェアトレード商品が多く導入されています。

たとえば、多くのホテルにおいて部屋に置いてあるコーヒーや紅茶のティーバッグ、朝食で提供されている飲み物の多くをオーガニック認証や国際フェアトレード認証ラベルがついたものを使用しています。

ポルトガル(カスカイス)のSDGs・持続可能な観光の取り組み

ポルトガルのリスボンとカスカイス(正しい読み方はカスカイシュ)に持続可能な観光に関する調査に行ってきましたので、そのご報告です。

ポルトガルの政府観光局Turismo de Portugalが、2027年までにサステナブル観光立国を目指す方針、「2027サステナブル観光戦略」に基づき、国の観光政策のなかに持続可能性の視点を取り入れています。

そんなポルトガルに今回は視察に行ってきました。

リスボンの電動キックボード

リスボンの電動キックボード

ポルトガルのリスボンの町に出て、ちょっとびっくりしたのは、上記のスウェーデンと同様にそこらじゅうに電動キックボードがあることです。

Google mapに行先を入れても、しっかり電動キックボードを使用した場合の時間やルートなども出てきました。

実際に使っている人を何人か見ましたが、若い男の子が多いです。

かなりのスピードを出していましたので、私のような高齢者には無理ですね。

カスカイスの持続可能な交通手段に対する取り組み

ポルトガルで最も進んだ試みを行い、スマート社会を実現しているカスカイス。

とても住みやすい街で、お金持ちの方も多く、日本人の移住者も結構カスカイスに住んでいます。

今回ポルトガルに行った際には、2人くらい地元の人と思われる日本人を見かけました。

そんなカスカイスは電動キックボードはもちろんですが、電動バイクも利用できます。

カスカイスの電動バイク

また、バスがとても発達しています。

mobi cascais

海外に行くとバスってどちらかというと貧しい人の乗り物(特に、ハワイなど)というイメージが強いのですが、カスカイスはそんなことはなく、市全体で自家用車の量を減らそうという意識が高く、コミュニティバスをガンガン走らしています。

普通のバスよりも豪華で、ちゃんとシートベルトもあります。

もちろん観光客も乗ることができ、2ユーロで1日乗り放題です。

バスの運転手さんが悠長な英語で説明してくれました。

また、電気自動車も推奨しており、電気を充電する装置もあらゆるところにありました。

電動乗り物の充電

カスカイスの自動ごみ仕分けごみ箱

カスカイスには自動的にごみを仕分けしてくれるごみ箱が町中にあり、こちらも驚きました。

自動仕分けごみ箱

観光客にもわかるように英語の表示もあります。

本気でSDGsとスマート社会に取り組みんでいるカスカイスです。

おわりに

ここでは海外のSDGs(持続可能な観光)の取り組み事例をご紹介しました。

日本においてもアフターコロナの観光は 「持続可能な観光」がキーワードとなるでしょう。

ハワイ州やスウェーデンなど海外の先例から学べることも多くあると思います。

もっと詳しく海外の持続可能な観光の事例について学びたい方は以下の2冊をおすすめします。

ヴェネツィア・ バルセロナ・ ベルリン・ アムステルダム・ サントリーニ島の「持続可能な観光」の事例が学べます。

こちらの本ではバルセロナ・ピピレイ島・ガラパゴス諸島のオーバーツーリズム・スイス・ヒマラヤの事例が学べます。

日本では熊本県の黒川温泉が素晴らしい持続可能な観光を推進しています。

日本での持続可能な観光の事例に興味のある方は黒川温泉【持続可能な観光SDGsの日本の事例】を一読ください。

参考文献・参考サイト

  • ハワイ州レスポンシブル・ツーリズム情報サイトMālama Hawaii「責任ある観光“レスポンシブル・ツーリズム”とは」https://www.allhawaii.jp/malamahawaii/responsible_tourism/
  • ハワイ州レスポンシブル・ツーリズム情報サイトMālama Hawaii「ハワイ独自の取り組み“アロハプラスチャレンジ”について」https://www.allhawaii.jp/malamahawaii/aloha_challenge/
  • 関口寿子(2020)「スウェーデンの旅から学んだこと①『フェアトレード』」『観光施設』第332号, 28-30.
  • 関口寿子(2020)「スウェーデンの旅から学んだこと②『再生可能エネルギーへの取り組み』」『観光施設』第333号, 20-22.
  • MobiCascais https://mobi.cascais.pt/
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