新型コロナウイルスはツーリズム産業に大きな打撃を与えました。
一方で、オーバーツーリズムが問題になっていたハワイなどの国内外有数の観光地ではコロナをきっかけに、SDGs「持続可能な観光」という方向に大きく方針を転換しました。
「持続可能な開発目標 (SDGs)」 とは、世界の貧困削減および持続可能な開発の促進に向けて設定された目標です。
国連世界観光機関(UNWTO)が観光分野における主導的な国際機関として、経済成長、包摂的な発展、持続可能な開発の推進力として観光を促進し「持続可能な観光」を進めています。
ポスト・コロナ時代へ向けての観光の在り方を探るのに、オーバーツーリズム・持続観光な観光SDGsという概念は必須のキーワードとなります。
そこでここではオーバーツーリズム・持続観光な観光SDGsに関するおすすめの書籍をご紹介します。
オーバーツーリズムに関するおすすめの本
最初にオーバーツーリズムに関するおすすめの本をご紹介します。
ポスト・オーバーツーリズム: 界隈を再生する観光戦略
つぎにおすすめなのは「ポスト・オーバーツーリズム: 界隈を再生する観光戦略」です。
なぜオーバーツーリズムが起きたのかの課題やそれに対する対策・事情など、海外の事例としてはヴェネチア・バルセロナ・ベルリン・アムステルダム・サントリーニ島、国内事例としては京都・由布院・倶知安の事例が学べます。
政策や反対運動など国や地域の対応についても説明されています。
具体的には以下のような内容が学べます。
- オーバーツーリズムとは何だったのか
- 日本の観光政策の現段階
- ヴェネツィア—テーマパーク化からの脱却を目指す古典的観光都市
- バルセロナ—都市計画を通した観光活動適正化の試み
- ベルリン— DMOを軸に観光の質を追求する
- アムステルダム—住民生活の優先を明確化した網羅的な政策対応
- サントリーニ島―歴史的町並み保全制度の奏効と観光インフラ整備の推進
- 京都―オーバーホテル問題に直面する世界的観光都市の岐路
- 由布院―生活型観光地が模索する暮らしと観光の距離感
- 倶知安― 外国化した地域の主権を取り戻す地域住民の模索と努力
こちらを読んでとにかく興味をもったのが、ギリシャのサントリーニ島でした。
以下がサントリーニ島です。
それまでサントリーニ島のことはほとんど知らなかったのですが、サントリーニ島をどのように保全し、どのように観光インフラ整備を推進してきたのかとても興味深い内容でした。
オーバーツーリズム: 観光に消費されないまちのつくり方
「オーバーツーリズム: 観光に消費されないまちのつくり方」はオーバーツーリズムの実例を紹介しながら、その要因・実態・対策を解説しています。
どのようにしたら旅行者の満足度を高め、地域が観光の利益を実感できるまちを作れるかを提案しています。
以下のような内容が学べます。
オーバーツーリズムとは
- 訪日外国人観光客の急増とその背景
- オーバーツーリズムの影響
- オーバーツーリズムのタイプと対策
海外のオーバーツーリズム
- 人気観光拠点型-スペイン・バルセロナ市など
- リゾート型-タイ・ピピレイ島など
- 稀少資源型-エクアドル・ガラパゴス諸島など
国内のオーバーツーリズム
- 人気観光拠点型-京都府京都市など
- リゾート型-沖縄県恩納村
- 稀少資源型-富士山
新たなオーバーツーリズムとその対策
- ソーシャル・メディアが生む次世代オーバーツーリズム
- ICT、AIを活用したブレークスルー
- レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)
- オーバーツーリズムへの向きあい方
北海道の美瑛町や鎌倉、国外ではスイス・パラオ・ヒマラヤの事例なども書いてあり、とても興味深い内容でした。
住民と自治 2020年 5月号
「住民と自治」2020年5月号がオーバーツーリズムについて特集しました。
以下のような内容が学べます。
- 「観光立国」政策とオーバーツーリズム
- 欧州諸都市のオーバーツーリズムへの取り組み
- ちぐはぐな京都市の観光政策
- 奈良公園にリゾートホテルはいらない
- 外需、外国依存のクルーズ船観光の危険性
- 民泊法制度の現状と課題─地方自治体の独自規制に着目して─
- 「山里ツーリズム」への模索─九州脊梁の「日本遺産」登録を見据えて
京都のオーバーツーリズムに関するおすすめの本
コロナ前から京都ではオーバーツーリズムが大きな問題になっており、京都に焦点をあてたオーバーツーリズム本が出版されています。
ここでは京都のオーバーツーリズムに関するおすすめの本をご紹介します。
インバウンド再生: コロナ後への観光政策をイタリアと京都から考える
「インバウンド再生: コロナ後への観光政策をイタリアと京都から考える」はコロナ後の観光政策を京都とイタリアを例に提案しています。
以下のようなことが学べます。
- コロナ直前、日本で起こっていたこと
- ヨーロッパ観光産業の四つの発展段階
- 団体旅行の誕生から個人旅行への転換
- 地方の小都市の観光公害と交通まちづくり
- 観光を生かしたイタリアの稼ぎ方―ホストとゲストの出会いが生んだスモールビジネス
- 女性が変えた京都の観光政策―町家・町並みを育てたアウトバウンド経験
- 観光都市ではなく文化・芸術都市を目指す
- アウトバウンドとインバウンドが生んだ四つのシフト
- コロナ後に向けた地方都市の観光再生
- 観光公害とコロナ・ショックから何を学ぶべきか
パンクする京都 オーバーツーリズムと戦う観光都市
「パンクする京都 オーバーツーリズムと戦う観光都市」は2019年に出版された本で、コロナ前の京都のオーバーツーリズムについてレポートしています。
以下のような内容が学べます。
- “世紀の愚策”と呼ばれた京都改造計画
- 花街に押し寄せる「舞妓パパラッチ」
- 「日常」に侵入する観光客
- 「インスタ映え」で地価高騰?
- 「お宿バブル」が街を塗り替える
- 民泊がもたらした「お宿カオス」
- 世界はそれを「オーバーツーリズム」と呼びはじめた
- 観光は「おいしくない」
- 京都から押し出される日本人
- インバウンド市場の主役は中国人
- 日本社会の「観光客ぎらい」
- 京都ブランドは「観光ありき」ではなく「文化ありき」
- 京都観光史~京都はいつから「古都」なのか?
- 京都タワーと京都駅ビルがもたらした景観論争
- 「そうだ 京都、行こう。」時代の京都リピーターたち
- 我々は観光客に何を奪われるのか
- テーマパーク化する京都京都が観光で滅びる日
京都が観光で滅びる日 – 日本を襲うオーバーツーリズムの脅威 –
「京都が観光で滅びる日 – 日本を襲うオーバーツーリズムの脅威 –」も京都のオーバーツーリズムについて書いている本で、解決策も提案しています。
- 街が観光に食いつぶされる
- 京都の民泊政策
- 「住む場所」「働く場所」が奪われる
- 大渋滞する京都の道路
- 市民の不満と京都
- 迷走と混乱の観光政策
- 住民が住みやすい「古都京都」とは
- 京都駅前大学移転構想の大欠陥
- 京都市の深刻な財政危機
- 財政再生の処方箋
観光立国政策と観光都市京都
「観光立国政策と観光都市京都」は2020年に出版された本です。
京都に焦点をあててオーバーツーリズムや持続可能な観光について考え、アフターコロナのインバウンドの在り方を提言している本です。
以下のような内容が学べます。
第1章 京都観光の理念と観光立国政策
- 「インバウンド旋風が吹き荒れている」
- 「“観光公害”はいつから始まったのか」
- 「呼び込み観光は東山区を荒廃させる」
- 「東山区のまちづくりを考える」
第2章 安倍政権、地方創生の陥穽
- 「地方創生に期待できますか」
- 「“たられば”では、人口減少に歯止めがかからない」
- 「希望から現実へ、出生率を上げるには」
- 「少子化が“国難”なら2兆円パッケージは少なすぎる
第3章 京都はスローな成熟都市
- 「京都はスローな成熟都市なのです」
- 「死亡が出生を上回る都市に未来はあるか」
- 「京都市の出生率、なぜ低い」
- 「全国最下位出生率から脱出が課題」
- 「門川市長も危機感、京都観光業の雇用実態」
第4章 民泊上陸が意味するもの
- 「民泊バブルは現代の黒船来襲なのだ」
- 「首相官邸が指揮した民泊規制改革」
- 「民泊新法のビフォーアフター」
- 「民泊新法施行でヤミ民泊はどうなる」
- 「民泊はもはや供給過剰、飽和状態なのだ」
第5章 民泊新法を巡る攻防「エアビーの身勝手な言い分」
- 「旅館業法の適用除外が眼目」
- 「規制改革会議主導の民泊導入は頓挫した」
- 「民泊新法施行半年の光と影」
- 「京都の民泊は簡易宿所に流れた」
第6章 オーバーツーリズムの危機
- 「オーバーツーリズムの危機が現実化している」
- 「“モンスター化”する観光産業をどうする」
- 「富裕層観光の表と裏」
- 「門川市政の原罪、オーバーホテル問題」
- 「京都の平成時代は“狂乱状態”で終わるのか」
- 「京都は“インバウンド総量規制”が必要だ」
第7章 京都市長選における政策転換
- 「観光政策の見直しは時代の変わり目に」
- 「次期京都市長選では観光政策が一大争点に」
- 「京都が京都でなくなる日」
- 「もうそこまで来ている、京都が京都でなくなる日」
- 「本物の観光都市、いわゆる観光都市」
- 「京都市長選を通して浮かび上がった基本問題」
第8章 京都観光の歴史的転換点
- 「絶頂からどん底へ、4期目門川市政が直面するもの」
- 「京都市政、観光立国から脱却のとき」
- 「世界はビフォーコロナからアフターコロナへ」
- 「新型コロナ危機の下で京都市基本計画、観光振興計画はどうなる」
持続観光な観光SDGsに関するおすすめの本
最後に、コロナを機に近年注目をあびている「持続観光な観光」について書かれている書籍をご紹介します。
観光再生――サステナブルな地域をつくる28のキーワード
「観光再生――サステナブルな地域をつくる28のキーワード」は2020年11月出版の書籍で、インバウンド観光に特化したサイト「やまとごころ.jp」を運営している村山慶輔さんの著書です。
こちらはアマゾンのaudibleで無料体験で無料で聞けます。(無料体験終了後、退会しても聞き続けるこができます)audible版
以下のような内容が学べます。
第1章観光再生に欠かせない「サステナブル」という視点
- サステナブル・ツーリズム
- リジェネラティブ・トラベル
- 地域教育とシビックプライド
- コミュニティ・ツーリズム
- 観光貢献度の可視化
- 量から質へ(発想の転換)
- BCPの策定
第2章「新技術」でネクスト・ステップへ進む
- マイクロモビリティ
- 観光型MaaS
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
- スマートツーリズム
- バーチャルツーリズム
- ライブコマース
- AI・ロボット/非接触型機器
第3章観光の新たな「トレンド」を捉え、対応する
- アフターインスタ映え
- 食の多様化
- アドベンチャー・ツーリズム
- ロングステイヤー/ワーケーション
- レスポンシブル・ツーリズム
第4章「新戦略」で未来のニーズを先取りする
- 高付加価値化
- 富裕層(ラグジュアリー)マーケット
- ニューマーケットの開拓
- 観光CRM
- リスク分散/事業の多角化
第5章地域を支える「人」を育てる/呼び込む
- 人材の確保・育成
- サバティカル制度
- ダイバーシティ
- 関係人口の創出
都市自治体におけるツーリズム行政-持続可能な地域に向けて
2021年出版の「都市自治体におけるツーリズム行政-持続可能な地域に向けて」はアカデミックというよりも報告書のような書籍で、以下のような内容が学べます。
- コロナ禍で見直される観光の意義
- 消費されない観光価値を生むストック型の観光行政へ
- 地域のインフラを活用した観光の可能性
- 地域における関係性構築と観光まちづくり
- これからの観光政策と自治体行政
- 事例にみる都市自治体の「ツーリズム行政」の実践と展望-八戸市・釜石市・倉敷市へのヒアリング調査結果-
- 観光政策に関するアンケート調査報告
- 都市自治体におけるツーリズム行政に関する研究会資料
新しい時代の観光学概論 : 持続可能な観光振興を目指して
「新しい時代の観光学概論 : 持続可能な観光振興を目指して」は2020年9月に出版された本です。
最新の観光学の概観が学べます。
第1章 観光の意味
- 「観光」とは──国の光を観る
- 観光と旅行の違い
- 観光研究の潮流
第2章 観光の功と罪
- 観光地化のメリット
- 観光は両刃の剣──負のインパクト
- 観光に蔓延する一見さん商法とブーム至上主義
- 観光客・地域住民・観光事業者の三方一両得
第3章 観光で実現する持続可能な発展
- SDGsと観光の関係
- サステナブル・ツーリズムが生まれるまでの経緯
- サステナブル・ツーリズム概念の定着
第4章 日本の観光発展史
- 開国,そして不平等条約改正と観光の関わり
- 喜賓会からジャパン・ツーリスト・ビューローへ
- 外国人観光客誘致の受難と克服,そして戦争の時代へ
- 力強い戦後復興と旅行会社の相次ぐ誕生
- 東京オリンピックを契機に加速した観光基盤整備
- 旅行代金の低廉化によるアウトバウンド全盛
- 旅行の流通革命──HISとAB-ROAD
- 再び,アウトバウンドからインバウンドへ
第5章 観光産業論I:旅行業
- 旅行業の類型
- 企画旅行における旅行業の6つの義務
- 旅行業のさらなる活用
第6章 観光産業論II:旅行業の流通
- 旅行業界の複雑な流通
- 添乗(旅程管理)業務を担う派遣添乗会社の存在
- OTAの台頭とそのビジネスモデル
- OTAとホテルの最低価格をめぐる攻防
第7章 観光産業論III:交通機関と宿泊機関
- 航 空
- 鉄 道
- バ ス
- 船 舶
- その他の交通
- ホテル・旅館
第8章 ホスピタリティ論
- ホスピタリティ=おもてなし?
- 安心保障関係
- 相互信頼関係
- 新たな関係性としての「一体関係」
第9章 観光行政・政策論
- 観光政策が重要政策課題となるまで
- 観光政策を取り巻く現状
- 観光を担当する組織
- 観光プロモーションの様々な手法
- 観光まちづくりの力
- MICE
第10章 観光資源論I:人文観光資源と自然観光資源
- 観光資源の類型
- 人文観光資源
- 自然観光資源
第11章 観光資源論II:その他の観光資源と世界遺産
- 複合観光資源
- 社会観光資源
- 無形観光資源
- 世界遺産と観光
- 観光の光と影の資源──被災地観光,戦跡観光
サステナブルツーリズム
「サステナブルツーリズム」は本の題名のごとく、サステナブルツーリズム(持続可能な観光)に関する書籍です。
ただ、こちらは2018年、つまりコロナ前に出版されています。
そのためアフターコロナという観点では書かれていません。
純粋に「地球環境の持続可能性」という観点から観光について考察している書籍です。
以下のような内容が学べます。
第1章 「持続可能な開発」とサステナブルツーリズム
- 「持続可能な開発」という概念の発祥
- 観光産業の拡大と持続可能な開発
- 地球サミットからグリーンエコノミーへ:観光への期待
第2章 サステナブルツーリズムの概要
- サステナブルツーリズムの定義と原則
- サステナブルツーリズムの適用範囲
- サステナブルツーリズムと他の観光の位置づけ
- 観光形態によるサステナブルツーリズムの優先施策
- サステナブルツーリズム実現を補完するツール
- サステナブルツーリズムの基準と指標
- 認証制度
- 観光環境容量(Tourism Carrying Capacity)
- サステナブルツーリズムの実践者
- サステナブルツーリズム実践の課題
- 観光産業の特性:複雑なサプライチェーンと旅行会社の役割
- 中小規模の事業者
第3章 現在の地球から考える持続可能性
- 現在の地球の状況
- 地球の持続可能性と観光が与える負荷
- エネルギー消費と温室効果ガスの排出
- 生物多様性の損失
- 水の過剰利用と廃水
- 資源の過剰利用と廃棄物
第4章 有限な地球におけるサステナブルツーリズムの実践
- 必要不可欠なグリーン施策
- 低炭素型観光
- 自然共生型観光
- 節水と廃水管理
- 持続可能な消費と生産
第5章 真のサステナブルツーリズムを目指して
おわりに
ここではオーバーツーリズム・持続観光な観光SDGsに関するおすすめの書籍をご紹介しました。
近年このような書籍が多く出版されているということは、観光業は今大きな転換点を迎えているということだといえます。
なお、海外の持続可能な観光に関しては海外の持続可能な観光の成功例・取り組み事例をご覧ください。
日本の持続可能な観光の事例にご興味のある方は黒川温泉【持続可能な観光SDGsの日本の事例】を一読ください。